2023-04-28

デッカー「エソテリック・タロット」、エテイヤのカルトマンシーの章を読み終わる。結局、思ったよりエテイヤの技法については取り上げられていなかった。小アルカナの各カードの占い上の意味の変遷について詳しかった(大アルカナについては、エテイヤは大改編を行った上、後世にも影響を残さなかったので、デッカーは考察をほとんど放棄している)。

エテイヤは若いときに、先輩カルトマンシーたちからピケ・デッキ占いのカードの意味を収集、まとめていた。これが後のエテイヤのタロット占いの小アルカナの意味へつながり、また後世のタロッティストたちに大きな影響を与えることになる。

ピケ・デッキとはプレイング・カードの一種で、2〜6がない、Aと7〜キングまでの全32枚のデッキのこと。

では、このピケ占いのカードの意味はどこから来たのか?という問いに、デッカーは「さらに古いタロット占いから!」と答えていて(わざわざ「!」付き)、マジ!?となってしまった。タロット占いよりプレイング・カード占いの方が古い、と思っていたので。

●ひとまず自分が理解しているところでは、

・プレイング・カード占いの最初の記録:1414年、バルセロナの運勢を予測する格言テキスト入りプレイング・カード

・タロット占いの最初の記録:1750年以前(1760-1783年説もあり)、ボローニャのタロッキ占いの資料

なので300年くらいの差でプレイング・カード占いがタロット占いより早い。

エテイヤはまずプレイング・カード占いの本を出版、それが1770年。タロット占いの本を出したのは1791年になってから。

ボローニャの資料とエテイヤの最初の本はほぼ同時。一部のカードの意味に重複もあるようで、どっちかがどっちかに影響を与えたのか、気が遠くなりそうな繊細な歴史的議論(この記事のコメント欄を見よ!)もある。

●やっぱりデッカーの言う「ピケ占いはより古いタロット占いの意味を保存していた」という主張は、あんまり根拠ないように見える。でも重鎮デッカーが言ってるならなにかあるのか・・・。

●さて、エテイヤの技法をもっと調べるにはどうすればいいか?

さらに、最初に調べようとしていた「エテイヤはコートカードの各ランクにもエレメントを割り当てていたか?」もわからなかった。それについてエテイヤが触れている、という証言は別にあったので、どこかに記述はあるのだろうが・・・

フランス語の原書をあたるしかない?

●ちなみにもうちょっとエテイヤ豆知識。

●エテイヤ Etteilla とは、本名のアリエット Alliette を逆さに読んだものだが、これはカバラを尊重したエテイヤがヘブライ語の筆記方向(右から左)で名前を綴り直したためではないか、とデッカーの推測。

●エテイヤは4スートに4エレメントを対応させたが、現在一般的な対応とは違う。

火=コイン/空気=ソード/水=カップ/土=バトン

ちなみにこの順番で、YHVH(ヨド・ヘー・ヴァウ・ヘー)の各文字にも対応する。YHVHとはユダヤ教の神の名前(ヤハウェ)、この4文字はテトラグラマトンと呼ばれる。ヘブライ語で書くと「יהוה」(右から左へ読む)。

YHVHはエレメントの上から順番に対応する。アリストテレスの四元素説では、月下の世界は上から下に向かって、火、空気、水、土の順番の層になっている。

エテイヤの場合は、この上から順番にYHVHが対応している。

(アリストテレスの四元素論については以前の記事を参照)

●エテイヤのコートカードのランクに対応するエレメントを推測してみる。エテイヤが「YHVHのエレメントを上から順番にスートにも対応させている」のであれば、「コートカードも上から順番にYHVHに当てはめる」かもしれない。その場合、キングが一番上、ペイジが一番下になるので、

キング=Y(火)/クイーン=H(空気)/ナイト=V(水)/ペイジ=H(土)

となる(エテイヤの時代には、まだ黄金の夜明け団によるキングとナイトの交換問題は起きていないから、素直にこの順番でいい)。

そこからエテイヤのスート=エレメント対応から推測すると、こうなる。

コインのキング=火の火
コインのクイーン=火の空気
コインのナイト=火の水
コインのペイジ=火の土
ソードのキング=空気の火
ソードのクイーン=空気の空気
ソードのナイト=空気の水
ソードのペイジ=空気の土
カップのキング=水の火
カップのクイーン=水の空気
カップのナイト=水の水
カップのペイジ=水の土
コインのキング=土の火
コインのクイーン=土の空気
コインのナイト=土の水
コインのペイジ=土の土

さて答え合わせはできるのか・・・

●この「上から順」が他のスート・システムでも通用する訳ではない。

現代でも一般的な黄金の夜明け団システムでは、

火=ワンド/空気=ソード/水=カップ/土=ペンタクル

だが、YHVHに対応する順番で並べると、ワンド火/カップ水/ソード空気/ペンタクル土となり、アリストテレスの四元素論の上から順には従わない。

●ちなみにウェイト=スミス版の塔や月のカードで、空にレモンみたいなものがいっぱい描いてあるのがヨド・ヘー・ヴァウ・ヘーの「ヨド」の文字。