●江之浦測候所へ行ってきた。アーティスト杉本博司氏が設計した、山中の一大庭園、ランドスケープ。
冬至の日にぴったり太陽の光が差し込む70mのトンネル、夏至の太陽が差し込む100mのガラスと岩の廊下、春分・秋分の太陽がまっすぐに役者を照らす石舞台、といった建造物群。古代人の天空意識の再確認。
そして「どうやってそんなもの手に入れてここに集めたの!?」と驚く歴史的な石たち(法隆寺の礎石、秀吉時代の五条大橋の礎石、江戸城石垣を敷き詰めた石舞台、縄文時代の石棒、平安時代の日吉大社の水鉢、鎌倉時代の十三重の塔、原爆投下時に爆心地にあった宝塔、古墳石棺を積み上げた鳥居、古代の化石たち・・・)。
数千年後どのような遺跡になっているか、という壮大なスケールで計画された未来の遺跡。それが美しい自然の中にある。
●出かける前に家で1枚、現地についてから1枚、カードを引いた。
家を出る前のカードは魔術師。一人のアーティストの意志から始まって作り出された場所。杉本氏の「古代人が意識を持ってまずした事は、天空のうちにある自身の場を確認する作業であった」という言葉があり、「意識のはじまり」「自分の確認」というところも、最初のカードである魔術師に関連している。
現地で引いたカードは、ハザード(ペンタクル)のペイジ。
大アルカナから小アルカナ、コートカードの中でも一番未熟なペイジへ。魔術師から一気にスケールダウンが起きた。一人の人間の意志から始まったプロジェクトでも、数千年規模の計画を前にしたら一個人はとても小さなスケールになるしかない。時間や世界に対し、相対的に自分のスケールを小さくすることで、むしろ大きなスケールのプロジェクトを取り扱えるようになる。
個人の視野や意志でなにかをやっても個人のスケールを超えられないが、自分を時間や世界の中でちっぽけなものと考えるなら、それだけ視野が大きくなり自分を超えたスケールのことができる。